特定非営利活動法人領域横断的集学的治療支援センター

設立趣旨

一つの病気を治療するためには、まず血液、画像、病理組織検査などによる総合的な診断に始まり、手術等を含めた外科的な切除、内科的薬物療法、放射線治療などの医学的アプローチから、緩和医療や介護、社会的サポートを含めた全人的なケアに至るまで様々な専門領域が複合的かつ効率的に機能しなければなりません。このような多くの異なる専門領域が結集することは病気に苦しむ患者様へ本当の意味での集学的治療を提供するために必須と考えられます。しかし、多くの複雑な病態に対応するための高度な専門知識の必要性から、各専門分野の細分化が進んだことで、現在各領域を横断しながら最適な連携体制をマネージメント可能な人材、システムの不足が大きな問題となっております。

一方、地域医療に目を向けますと、逆に各専門分野の人材不足による医療レベルの偏在化が問題となっており、バランスよく高度な専門医療の担い手を育成し、地域性を考慮して適切に配置することは、本邦の医療において最重要課題の一つであるといえます。従って、効率のよい集学的治療の提供のためには、各大学や地域の垣根を越えて、必要な医療資源を最適な組み合わせで展開できるための領域横断的な情報収集力・コーディネート力が必須であり、その一つとして多施設で協力できる臨床研究などによって、新たな集学的診断・治療法或いは低浸襲がん治療と再生医療を複合した新治療法などを連携開発していくための協力的臨床システムの構築が有用と考えます。

このような高度な専門領域を統合して提供するために、国際的交流の中で先行する欧米のシステムに学び、常に最先端の情報を収集しフィートバックすることで、専門分野の質を高め、新たな集学的治療の可能性を広げる必要があります。また海外における各領域の人材交流は、グローバルな視野をもった専門家の育成のみならず、医療資源の有効配分を実現化する高いマネージメント能力を有する人材の育成に貢献し、結果として国民皆保険制度を享受する本邦でしかできない日本発の領域横断的医療システムの開発と発信を可能とするものと考えます。

患者様に本当の意味で効率的かつ有効な治療を届けるべく、慶應義塾大学では総合大学の利点を生かし、文部科学省の補助の元に学部・診療科の垣根を越えた領域横断的な診療体制を築いて参りました。一方、このような公的資金によるプロジェクトにはその結果如何に関わらず資金終了の期限があり、今後オールジャパン体制に発展させるべき本課題を継続するためには、我々が掲げる人材・システム育成に賛同いただける個人・法人からの寄付金・会費の受け皿として法人を設立し、今後の安定した実務基盤を構築することが必須です。

本法人は、以上のような認識に基づき、患者様本意の集学的治療の実現化と普及・発展に必要な人材とシステムを育成することを目的とし、複数にまたがる領域の中立的立場で、新たな治療法の開発や研究者主導臨床研究および集学的医療研究を行う研究機関や研究者に対する支援や関連する情報提供を行い、また国内外の医療従事者教育を含めた様々な領域横断的な事業展開を目指します。このことによって、医療の地域格差を減らすと共に、医療資源の適切な配置による均一化と医療レベルの向上につながることが期待されます。また高度医療の専門家と同時にそれを有機的に統合させる領域横断的コーディネーターの育成および生涯教育を行うことで、あらゆる疾患の治療成績の向上と、広く一般市民の健康と福祉の増進に寄与することを目的としています。

平成27年年5月25日
副理事長 板野 理

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